フィラリアとは、蚊に刺されることで感染する寄生虫です。

　蚊が吸血する際に犬の皮膚に感染します。感染したフィラリアは犬の体内を移動、成長し、最終的には心臓に寄生します。心臓内で成虫になったフィラリアは子虫（ミクロフィラリア）を生みます。ミクロフィラリアは蚊に吸血され、蚊の体内で成長し、また別の犬に感染していきます。

　フィラリアに感染してしまうと、初期は無症状ですが、徐々に咳（せき）が出る、運動を嫌がる、お腹に水がたまる（腹水）などの心臓病の症状が出てきます。また寄生した虫が心臓内を急に移動することで全身状態の急激な悪化が生じることもあります（大静脈症候群）。放置すれば死に至ることもあります。投薬を行えばほぼ予防は可能ですが、残念ながら毎年数件フィラリアの感染が認められます。こういった状態にならないように毎年の予防が大切です。

　フィラリアの予防薬は犬の体内に侵入したフィラリアの幼虫を駆除するお薬です。駆虫薬（虫下し）ですので、体内に侵入したあとに飲ませなければ効果がありません。月１回駆虫することで、フィラリアが成長しないうちにやっつけてしまうことで予防しています。

　このためフィラリア予防薬の投薬期間は「感染期間開始1ヵ月後から感染期間終了1ヵ月後まで」となります。この感染期間はその年の気温によって変動します。これは蚊の体内でフィラリア幼虫が成長し、犬への感染能力を持つようになるには暖かい気温が必要だからです。真岡市の近郊である宇都宮でのフィラリアの感染期間はおおむね５月〜１１月までとなっていますので、投薬期間は５月下旬頃から１１月下旬頃までをお勧めしています。

　「もう蚊もいなくなってきたし・・・」と１０月で止めてしまったりすることは危険です。フィラリア薬を最後まで飲ませず途中で止めてしまった場合、それ以降の感染は予防できません。それまでの予防も無駄になってしまいます。特に蚊がいなくなってから１〜２ヶ月後まで飲ませきることが大事になります。

　またフィラリアの季節の始め、投薬を開始する前には毎年のフィラリアの検査が必要です。これは万が一の感染がないか確認するためのものです。感染している状態でフィラリア薬を飲ませてしまうと、ショックなどの重篤な症状が出ることがあります。

　当院では、フィラリア予防薬として、錠剤、チュアブル（お肉タイプ）などをご用意しています。現在ではノミ、マダニの予防が同時に可能なタイプの薬が主流になりつつあります。詳しくはご相談ください。

　また、猫のフィラリア症予防に関しましてはスポットタイプの投薬のみとなります。ノミ・マダニや消化管内寄生虫を同時に予防する薬になります。ご希望の場合はご相談ください。

　【大静脈症候群のイヌの心臓から摘出したフィラリアの虫体】